表現に“正しい色”なんてない。 #nomorerules. vol.10 #1 女王蜂 アヴちゃん 2021.12.16

表現に“正しい色”なんてない。 #nomorerules. vol.10 #1 女王蜂 アヴちゃん 2021.12.16

表現に“正しい色”なんてない。 #nomorerules. vol.10 #1 女王蜂 アヴちゃん 2021.12.16

デビュー10周年を迎えたバンド「女王蜂」を率いる稀代のヴォーカリストであり、作詞作曲も手がけるアーティスト・アヴちゃんが考える“自分らしさ”とは?


01. 常に覚悟と美意識を持って生きる


02. 自分を見つめることを恐れない


03. 悩むことで、“私”にたどりつく


NO MORE RULES.

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ステージは、自分を解き放つことができる唯一の場所

ステージは、自分を解き放つことができる唯一の場所

ステージは、自分を解き放つことができる唯一の場所

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──女王蜂は今、全国ツアーの真っ最中ですね。アヴちゃん自身は舞台や映画でも活躍していますが、音楽活動とそれ以外でどうスイッチを切り替えていますか?

切り替えられるものではないんです。ただ、ステージが一番楽っていうのはありますね。たとえば、歌詞は自分がずっと思い続けてきたことを凝縮した“結晶”のようなもの。それを大好きなメンバーと、信頼するスタッフと一緒に撃ち放てるライブ中は、一番正しく時間が流れているように感じるんです。“LIVE”という文字通り、自分が生きているその瞬間を、来てくれた方々の前で徹底的に見せることができる。そういう人生を選べてよかったなって思います。

──バンドがどんどん大きくなっていくなかで、色々なことを並行して進めたり、コントロールしていくのは大変ですよね。

コントロールというよりも、“持ち得ていた覚悟と培った美意識”がそうさせているんだと思います。衣装を自分で染めたり、ちょっとしたフォントや文章、物販ひとつまで、“すべて私の血が入った状態で出したい”という気持ちがあるから。その上で、自分の思う正解だけではなく、みんなが感じるような美しさや煌めきも表現したいという姿勢が、「そこまでやるんだ」と感じてもらえている理由かもしれません。

SCROLL   SCROLL

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SCROLL   SCROLL

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──“カリスマ的なヴォーカリスト”、“バンドを率いる美しきクイーン”といった鮮烈な印象で語られることの多いアヴちゃんですが、自分自身をどんな性格だと思いますか。

自分から見ても「こんなに素直な人はいないな」って思うくらい、本当に素直です。もはや服を着ていても裸どころか内臓まで見えているような状態なので(笑)。自分のことは基本大好きで愛してるけど、すごく大きいエンジンをいつも背負っているから、動かすのがしんどいときもありますね。ケルベロスみたいにいくつもの自分が頭の中にあって、こんなに重くて地面にめり込んでるのに、軽やかだと思われているのが不思議で面白いです。対極に見えるものって、実はすごく近いのかもしれないですね。

表現は上手くなくても、伝わらなくてもいい

表現は上手くなくても、伝わらなくてもいい

表現は上手くなくても、伝わらなくてもいい

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──アヴちゃんにとって、“自己表現”とはどういうものでしょうか。

地球にとってのマグマや海のように、自分自身の中に脈々と流れているものを出していくことがすごく大事だと思っています。音楽もそうで、アイデアやひらめきはもちろん入っているけれど、私の表現はもっと肉体的なもの。たとえば私は油絵を描くんですけど、遺伝で色の区別がしにくいときがあり、緑と赤と茶色の差がわからないんです。子どもの頃にお絵描き教室で孔雀の絵を描いたら、先生に「見たままを描けばいいのに、どうしてこんな色になったの?」って言われたことがあって。そのとき、私はその場で指に絵の具をつけて、紙を破くくらいの強さで描いたんです。「私が表現したいのはこれなんだ!」って(笑)。上手くなくても、伝わらなくてもいい。見る人によって色は違うし、正解なんてない。だから、自己表現っていうのは全人類が自分の色でしていいんだって私は思います。

──今の時代、「自分が何をしたいのかわからない」という方も多いと思います。子どもの頃から好きなこと、やりたいことに迷いはなかったですか?

自分が何をしたいのかわからなくて悩むのは、きっと選択肢が多いからじゃないかしら。それはとても素晴らしいことだと思います。私は自分で選んだというよりも、自分の心を「これ以上は見ない方がいいんじゃない?」っていうところまで目をそらさずに見続けなければいけなかった人間なので……。自分を直視するのがキツくても、目を見開くことが大事なんじゃないかな。深夜にお腹がすいて、我慢できずに何か食べちゃうときってあるでしょ? それと同じで、自然とやりたいことを制御できなくなる日が来ますから(笑)。焦らずに、その瞬間を信じてほしいです。

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──自分の“軸”みたいなものを見つけるまでに、大切だったと感じる経験はありますか。

どんな分野でも1万時間やれば一流になれるっていわれているじゃないですか。私がそれぐらいやったことってなんだろうと考えたら、人の顔色を15万時間くらい見てきたなって思うんです。たとえば自分の見た目や境遇をいつも説明しなきゃいけなかったり、生まれ持った心身のデザインに対して「おかしい」とされる状況を体感したり、本当はふわふわの髪の毛をアイロンでストレートに伸ばしたり。でも私が「そのままの自分で良かった」って言える人間だったら、この場には立っていないと思うんですよね。人の顔色を見て、自分を疑って、それでも自分を強く信じるっていうことに15万時間かけてきたからこそ、今の自分があるように思います。

SCROLL   SCROLL

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私たちの存在はキャラクターじゃなくて、オリジナル

私たちの存在はキャラクターじゃなくて、オリジナル

私たちの存在はキャラクターじゃなくて、オリジナル

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──“自分らしさ”が揺らいだり、変化することってありますか?

色々なセクションの“私”っていうのがいると思うんです。たとえば舞台のお稽古中に心が壊れてしまって、家のドアノブがひねれず、外に出られなくなることもありました。でもその揺らいだりする時間って2秒くらいで、2秒後には「こういうとき、私はこうなるんだ」って自分を客観視して切り替えられる。「いつかこの感情を作品に生かせる」って。結局、どんな自分も全部ステージに帰結していくから、そこはブレずに一貫しているんですよね。

話は少し変わりますが、昔から私のことをいつも「姫」って呼んでくれる男の子たちがいて、なんで姫なのか聞いたら、その人曰く「絶対に媚びない感じが姫なんだよ」って言われたこともあります。自分としては、お姫様になりたかったけど女王様になるしかなかったって思っていたのに、案外「姫」って思われていた(笑)。“自分らしさ”って自分じゃわからないから、それはすごく嬉しかったですね。

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──以前、インタビューで“悩むことも自分らしさ”とお話しされていましたが、悩んだり迷ったりすることをポジティブにとらえることができるのはどうしてですか。

人によって違うから一概には言えないんですけれど、「悩まなかったら、あなたも私もここまで来てないから」って思うんです。悩むことは思うことと同じで、私たちはキャラクターじゃない、オリジナルの存在なんだからって。もちろん既存のシステムに乗っかっている時点でおままごとだとは思っています。でも、そこに何を詰めていくかって考えたら、根性とか、信念とか、いっぱいあるんですよね。日常を生きるっていうのは遊びじゃない。自分のやることに必死で、本気なんです。自分の信じる“核”って、何かを思ったり、悩んだりしないと得られないものなんじゃないかな。

──自分が本気じゃないと、人には伝わらないですよね。

その通りですね。誰かのターニングポイントになり得るような人間っていうのは、地獄も修羅もくぐって、自分で天国作って壊してっていう人じゃないと「運がいいだけ」で片付けられちゃうから。「アヴちゃんっておしゃれで可愛い、曲もすごい」って言っていただけたとしても、私はそれらが全部どこから来てるのかわかってるから、浮き足立てない。地に足をつけるどころか、どんどんめりこんでいくような感覚でやっています。


次回は、自分自身を縛るものについて、なりたい自分になるために努力したことなどを、アヴちゃんにお伺いしていきます。

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NO MORE RULES.

NO MORE RULES.

NO MORE RULES.

Profile

女王蜂 アヴちゃん
2009年に結成し、2011年に『孔雀』でメジャーデビューしたバンド「女王蜂」のヴォーカルであり、作詞作曲も手がけるアーティスト。圧倒的な音域の広さとパフォーマンス、コンセプトや衣装まで作り込まれたステージで多くの人を魅了する。2021年10月に新曲『KING BITCH』をリリース。音楽活動のほか、ミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(2019年)や映画『犬王』(2022年公開)への出演など、活躍の幅を広げている。

Staff

Photo:Yui Fujii(Roaster)
Hair&Make:Mika Kimura
Text:Mayu Sakazaki
Edit:Haruyo Sugie,Sara Fujioka,
Ayano Homma(Roaster)

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