ありのままでいいと思えたとき、 自分らしさが愛おしくなった。 #nomorerules. vol.9 Kan 特別篇 2021.12.06

ありのままでいいと思えたとき、 自分らしさが愛おしくなった。 #nomorerules. vol.9 Kan 特別篇 2021.12.06

ありのままでいいと思えたとき、 自分らしさが愛おしくなった。 #nomorerules. vol.9 Kan 特別篇 2021.12.06

SNSを中心に、ジェンダーやセクシュアリティにまつわる活動を続けているKanさん。性的マイノリティ当事者からの視点で、現代の課題解決に取り組んでいます。今年9月にパートナーのTomさんと結婚をするため渡英。それまでKATE担当として公式Youtubeチャンネルでパーソナリティーを務めていました。今回、特別篇としてインタビューを実施。 Kanさんが解釈する自己表現と、その一部であるメイクの存在意義とは?


自分らしさって?


メイクにできること


自己表現の先にあるもの


NO MORE RULES.

NO MORE RULES.

NO MORE RULES.

自分でいられる瞬間はわくわくできる

自分でいられる瞬間はわくわくできる

自分でいられる瞬間はわくわくできる

――Kanさんは自分のことをどんな人物だと考えていますか?

不思議な人に映るかもしれません。僕って、話し方や雰囲気のせいなのか、柔らかい性格だと思われがちなんです。でも実際は胸の中に熱いものを持っていることが多くて“自分はこうしたい!”という意思を達成するために突き進む行動力のある人間だと思っています。

――そのような気持ちの強さを持てるようになったのはいつからですか?

物心ついたときから、気持ちの強さ自体は持っていたと思います。ですが、子供の頃は気持ちを表現することができなかったり、実行に移すのが難しくて感情的になってしまうこともありました。それが成長するにつれて、自分の“したい気持ち”を素直に受け止め、実現するための計画の立て方を徐々に身につけられるようになった気がします。自分が本当にしたいことを優先してあげることって、心においてとても大事なことだと思うんです。僕の場合は自分のよいところを見つけて書き出すというワークが効果的で、心のケアって一度おこなったらそれで終わりということではなく、継続してやることが大事なんだということも学びました。

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――今までにぶつかった壁はどのようなものでしたか?

自分が最初に性的マイノリティだと思ったのは、中学後半から高校に入ったときだったのですが、そのときは、自分が何なのかも、どうしたいのかも分からず、とても辛い気持ちでした。出口のないトンネルにいる感じ。

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――その壁を壊せたきっかけは何でしたか?

大学生のときにカナダに留学して、さまざまなバックグラウンドを持つ人との出会いがあったのですが、その中で幸せそうにしている性的マイノリティのひとたちを初めて見たんです。僕はずっと性的マイノリティであるために幸せになれないんじゃないかと感じていましたが、その人たちと友達になったとき、幸せになれないのは自分のせいではなく、既成概念で作られた価値観とその価値観に基づいて作られてきた社会の仕組みのせいなんだと気づくことができました。自分は自分でいいと思えたことが、自分らしさを見つけたきっかけになったと思います。

――Kanさんが自分らしくいられる瞬間、またそれが難しくなってしまう瞬間はどんな時ですか?

自分が自分であることで感謝されたり、人とつながる瞬間とか。そういうときはとても自分らしくいられます。そういう時って気分もわくわくしている気がします。反対に、自分という存在を受け止めてもらえていないと感じると残念な気持ちになることもあります。今年の秋に同性パートナーと結婚してイギリスに渡りましたが、イギリスではKanとしてではなく「日本人」としてカテゴライズされていると感じることがあります。たとえば、イギリスで就職活動をするにあたり行った転職エージェントとの面談で、日本のキャラクターの話をたくさん振られたことがあって。日本のことに興味をもち、共通の話題を作ってくれているのを嬉しく思う一方、日本人という大まかな集団ではなく、僕個人のことも興味を持ってほしいなと思ったことがありました。

メイクが“自分の好き”を気づかせてくれた

メイクが“自分の好き”を気づかせてくれた

メイクが“自分の好き”を気づかせてくれた

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――Kanさんは普段からメイクを楽しまれていますが、メイクを始めたことにより、何か発見はありましたか?

僕は化粧品会社に入社してからメイクを始めたのですが、それまで自分の顔について深く考えることってなかったんです。それが、メイクすることにより初めて自分の顔にじっくり触れて“自分の顔って人と違っていていいかも”って思えたんです。顔ってオリジナルなもので、メイクは世界にひとつしかない個性を表現できるもの。自分らしいパーツを活かすこともできる。僕はメイクをすることでもっと自分のことを好きになれた。だからメイクが好きです。
あと、実際に行動してみないと自分の本当の気持ちや、周りの反応ってわからないんですよね。僕ずっとヒールを履きたいという願望があったんですけど、どんな風にみられるか不安な気持ちもあったんです。でも初めてヒールを履いて外を歩いてみたら、普通に挨拶してくれる人がいて、似合ってるねと言ってくれる人がいて。行動してみたら、自分が思っていたよりも好意的に受け止めてもらえることがあるんだと気づきました。

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――メイクはKanさんの中でどのような役割を果たしているのでしょうか?

自分自身がそのまま表れるものだと思います。存在感を強調させたいと思うときは眉をちょっと太く描いてみたりとか、アイシャドウも明るめのものを使ってみようとなるし、自然体でいたいときは眉とベースメイクのみという日もあります。自己表現のひとつであり、メイクのテクニックを使えば“今日はこういう自分になりたい!”という気持ちを実現できるところが魅力だと思います。

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――Kanさんは“ジェンダーインクルーシブ”という考え方を体現されていますが、“ジェンダーインクルーシブ”なメイクとはどのようなものだと思いますか?

これが男性にとって正しいメイクだとか、ジェンダーで決めつけるのではなく、自分がこうしたいという意思でメイクをすることだと思っています。美容においても、やっぱりまだ男性らしさや女性らしさでくくりがちである部分は大きく、それってウェルカムな状態じゃない。メイクすることにおいても、「その人らしさをまるごと抱きしめてあげたい」と思っていて、僕がメイクなどで自分らしさを体現することで、誰かの表現の後押しになれたら嬉しいなと思います。

自己表現は、自分も、みんなも幸せにする

自己表現は、自分も、みんなも幸せにする

自己表現は、自分も、みんなも幸せにする

――“自分は人と違う部分がある”と人の目が気になって悩んでいる人がいたら、どんなことをすれば力になれるのでしょうか?

共感したいと思う気持ちを持っていることが一番大切なのではないでしょうか。可能であれば、“あなたの味方だよ”と伝えてあげるだけでも力になれると思います。あとは、人によってそれぞれ考え方や価値観があるので、“何かできることはある?”と聞いてあげるのもいいんじゃないかなと思います。何もしてほしくない人や、話を聞いてほしいだけの人もいると思うので。

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――Kanさんはご自身の経験をもとに、立ちはだかる様々な壁について力強く発信されていますが、一人一人がどのように変わっていくとよいと考えていますか?

自分のセクシュアリティについて考えたことがない人も中には多いのではないかと思います。自分の性をどう認識しているのか、また、好きになる性や、自分の性をどう表現したいかということと一度向き合ってみるのもいいかもしれません。直接的に何かをしなくても、さまざまなセクシュアリティがあり、その中に自分もいるということに気づくって、実はとても大きな一歩だと僕は思います。

そして、だれもが発言、行動、装い、メイクをすることやしないことなどの自己表現を自由にできるようにしていくことも大事なこと。人って誰もが他者と違う部分を持ち合わせているもの。まずはそれを自分自身で受け入れて、自分が心地よいと思う範囲で周りに見せてあげると、マイノリティであることで悩む人にとっても “自分は自分のままでいいんだ”と思える環境に変わっていくと思うんです。

――思春期の頃のKanさんのように、“自分らしさ”とは何なのか分からなかったり、自己表現の仕方がわからなくて悩みを抱えている方に向けて、メッセージはありますか。

自己表現っていうと、キラキラ輝いている人を想像してしまいがちですが、苦しくてどうしようもない気持ちや、自分らしさがわからないというネガティブな感情も、自己表現だということを伝えたいです。そして、そんな悩みや苦しみって流動的なもの。僕が10代のときに悩んでいたことと20代の今の悩みは違うし、今、嫌だと思っていることが将来活きてくる場合もあります。そのときの気持ちは事実なのだけれども、“これは変わっていくものなんだ”と一歩下がって見渡すことができたら、自分のことをもっと大切にしてあげることができるのはないでしょうか。

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――KATEはKanさんと一緒にジェンダーインクルーシブなメイクの提案に取り組んできましたが、今日のお話を通し、改めてメイクの分野からその人らしさ・個性を認め合い、それぞれが「no more rules.」に表現できるような活動を続けていきたいと思いました。最後に、Kanさんにとっての『no more rules.』とは?

それぞれの人たちが自己表現を続けた先にあるものだと思います。今いる場所や環境のルールに抑圧を感じたり、どうしようもない気持ちになることもあると思うのですが、そんな中でも少しづつ、自分のために自己表現を続けていけば、それを見ている周囲の人たちに勇気を与え、みんながありのままの自分を愛することができるようになると僕は信じています。それには終わりがなくて、見えた先にも新たなルールがあると思う。だからこそ、自分らしさを追い続けていくことが、それぞれを認め合えるインクルーシブなより良い環境を作る連鎖になっていくと思っています。

NO MORE RULES.

NO MORE RULES.

NO MORE RULES.

Profile

Kan

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都内の大学在学中にカナダ留学を経験。多様性のある社会の素晴らしさに触れ、衝撃を受ける。大学卒業後はイギリスの大学院でジェンダー・セクシュアリティについて学ぶ。帰国後はカネボウ化粧品に入社。2021年の7月に退社し、同性パートナーとイギリスで結婚するために渡英。現在は株式会社エキップ ロンドン支店に勤務しながら、性的マイノリティ当事者としてSNSなどを通し、誰もが生きやすい社会にするためのアクションを起こし続けている。

Staff

Photo:Ciarán Frame, Visuals of Scotland
Text:Ai Watanabe
Edit:Haruyo Sugie, Sara Fujioka(Roaster)

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