—感度の高いファッションセンスで注目されるよしミチさんですが、どのように今のファッションに行き着いたのでしょうか。
ミチ:高校までは服にすごく興味がある友達が周りにいなくて、いかにみんなに馴染めるかといった服を選び続けていました。中学は私服だったので、特に浮かないように周りに合わせていたんです。でも弟と原宿に遊びに行くようになって、学校だけだった自分のコミュニティが広がって、ファッションで個性を楽しむ友達に出会って、人に合わせてばかりじゃなくてもいいんだ、好きな服を着よう!って思えるようになれたことが、今のファッションにつながっていると思います。
よしあき:僕は不登校で友達がいなかったし、お姉ちゃんは服の話ができる友達が僕しかいなかったから、妥協だったけどちょうどいい関係でしたね。家族であり友達なので。
—お互いの影響は大きかったんですね。
ミチ:そうですね、一番影響受けたのは弟ですね。あと母が『ロッキー・ホラー・ショー』や『ビートルジュース』、『リトルショップ・オブ・ホラーズ』といったミュージカルやB級映画が好きで、小さい頃からいっぱい観せてくれていたので、そこからファッションやカルチャーはインスピレーションを受けました。
よしあき:僕もお姉ちゃんはもちろん、お母さんの影響もすごく大きくて。お母さんはよく、自分が持っているブランドの歴史やアイテムの説明をしてくれました。
—自己表現をすることは必要だと思いますか?
よしあき:はい、僕は特にSNSをやっていてよかったなと思います。中学のときは友達がいなかったけど、SNSを通じて友達もたくさんできたので。
ミチ:私はお洋服が好きでinstagramを始めたんですが、自分の好きなことを発信するのは大事だなって思います。自己表現することによって同じ趣味の友達ができ、自分らしさを出したことで人生が大きく変わっていったので。
—自己表現をして、批判が怖いと思うときはありますか。
ミチ:正直、自分が間違っているかもしれないと思うようなことは発信する勇気はありません。でもファッションは、自分の好きなものを着てるという思いで投稿しているので、批判は怖くないです。自分の服を好き、メイクを好きって言ってくれる人に届けばいいなぁって。絶対に万人受けすることって難しいと思うので、批判の意見よりも、そうやって褒めてくれる人の意見を大切にしたいです。
よしあき:例えば、批判的なコメントが送られてきたらもちろん嫌だなとは思います。そういう時にはスクショしたりしてミチに見せて“おもしろいね”って二人で笑って消化してます。一人だったら悩んでいたかもしれないけど、二人なら笑えるんですよ。お互いの存在で助け合いながら批判も乗り越えてきました。
—人の真似からはじまる自分らしさってあると思いますか。
よしあき:全然あると思います。真似していても体型も人も違うので、結局一緒にはならないじゃないですか。これいいな、って自分が思って真似しているんだから、それが自分らしさになると思います。
—自分らしさって何だろう、と悩む人にアドバイスはありますか。
よしあき:「自分らしさ」に悩む必要もないかなって思います。実際僕も僕らしさもよくわからないですし、ただ欲のままに生きて好きなことをしているだけなんです。みんなきっと「本当はこうなのに…」って思うことを我慢している部分が大なり小なりあると思うから、そういう制限を自分でかけないで思い切ってしたいことをしてみたら、その人らしさが見つかるんじゃないかなって思います。
ミチ:好きを主張することは大切かなと思います。時間を惜しまないで好きなことをやれば、“自分らしさ”が分かってくるし、周りからも分かってもらえると思います。あとは私にとって弟みたいな、自分の味方を見つけることです。味方がいれば、自分のしていることを正解って言ってもらえるので、自信を持ってやりたいことができるようになるんじゃないかなって思います。
Photo by よしミチ
—KATEは「no more rules.」をコンセプトに掲げていますが、お二人が縛られているなと思うルールはありますか。
よしあき:お父さんはすごく厳しくて逞しい環境で育ってきた強い人なんです。僕の性格がこうやってふわふわしているのも面白くなかったみたいで、男は男らしくしろ!ってよく言われていました。お姉ちゃんとおままごとして遊んでいると、グローブを買ってきて丸刈りにされたこともありました(笑)。あの時は怖かったけど、大きくなってからは段々言う事をきかなくなって今に至ります(笑)。
ミチ:思春期の頃とかは、不登校だった弟と友達の少ない私で結束が強くなってしまって、周りから世間のルールを言われても、“ううん、でも私たちはこれでいいの”ってやってきちゃったところがあるので、もちろん人に迷惑をかけない程度にですけど、今思い返すと一時期は、二人の世界観が行き過ぎちゃってたなと思う時もあったんですよ(笑)。
よしあき:周りに白い目で見られてても二人の世界観を突き詰めてね。あのときはすっごく楽しかった。でもちょっとやりすぎだったけど(笑)。
ミチ:正直黒歴史なんですけど、楽しかったって記憶しかないですね。
Photo by よしミチ
—そういう自由な性格は、海外に住んでいたことも影響していますか。
ミチ:関係しているかもしれません。台湾出身で、親戚もいるので行き来をするのですが、私の周囲の台湾の人は、「他人は他人、自分は自分」というようなマインドの方が多いのかなって思います。良い意味で他人の服装やすることにも興味がないので、批判も少ないし堅苦しくない雰囲気だと思うことがあります。
—二人の世界観が強すぎて、それが逆に縛られていると感じることはありますか。
ミチ:いや、正直楽でしかないです。一人のお仕事もありますし、一人になりたい時間はお互いあるんですけど、大部屋の楽屋とかでも弟がいたら安心するし気持ちが楽です。このお仕事も、一人だったら勇気が出ずに始めていなかったかもしれないですね。
—お二人はメイクをいつから始めましたか。
ミチ:中学校はアイブロウと色つきリップくらいだったので、ちゃんとメイクしたのは高1くらいからですね。
よしあき:僕は中2くらいから。ジェンダーレス男子が流行っていて、それに憧れて始めてみたのがきっかけでしたね。
—メイクをすると、マインドにどんな変化がありますか。
よしあき:メイクすると100%の自分に会えるので、高校生の頃は完璧に仕上げたその状態じゃないと、外に出られないくらいマインドに影響がありました。ファンデーションとマスカラなどのアイメイク、色つきリップやシェーディング、涙袋メイクをしていました。
ミチ:私は結構メイクで顔が変わるので、メイクをしてこそ自分が完成するっていうイメージです。メイクは自信のもとですよね。
よしあき:ミチはメイクし始めのときは別人だったけど、最近は肌も整えるようになって、すっぴんでも同じ人になってきたよね(笑)。メイクすると自分自身もキレイになりたいって思うから、スキンケアとかいろいろな美容に気が回るようになるんですよね。
ミチ:そうそう、メイクをした完成形に、すっぴんも近づけようと頑張れるんです。あとはメイクをしないと洋服も着たくなくなるので、メイクはすべての基盤だと思っています。
—こだわっている点はありますか。
ミチ:自分の気分を上げられるようなメイクを心がけています。季節に合わせたり、パーソナルカラーにあったメイクっていうのはあまり気にしないようにしていますね。例えば私は多分イエローベースなので、ピンクのリップは合わないと言われていて。でもそれを気にして、好きなのにつけないということはしないようにしています。ピンクの気分だったら、気にせず塗りたい。そのピンクが似合うように頑張りたいです。
よしあき:僕は肌がアレルギーで荒れちゃうときがあって、そのときはファンデーションを使うんですけど、いかに塗ってないようなナチュラル感を出せるかということに気をつけています。いざというときのお守りみたいな感じで、20種類以上ファンデーションを持っています。
—今後メイクに期待することは何ですか。
ミチ:メイクって時代を映す鏡というか、時代ごとに違う象徴的なメイクが生まれるじゃないですけか。私は時代別メイク動画を見るのも好きなので、新しいものが生まれるのを楽しみにしています。
よしあき:今、新しい技術を用いたメイク品っていっぱい出てきているじゃないですか。そういう技術の進歩で出てくる革新的なメイクアイテムは楽しみですね。あと今や男性がメイクをするのは息をするのと同じくらい自然だと思うのでドラックストアでも買える男性専用メイクアイテムがもっとあったらいいなと思いますね。
ミチ Michi
1998年、台湾生まれ。フォロワー総数100万人超の今最も注目のファッションアイコン。台湾×日本のハーフで日本語・北京語を話すバイリンガルモデルとして、弟のよしあきと共に“よしミチ”姉弟の愛称で人気を集める。現在はSNSをはじめ、雑誌やテレビ、YouTubeなどジャンルを問わず幅広く活動している。
よしあき Yoshiaki
2000年、台湾生まれ。海外旅行やハイブランドに囲まれたファッショナブルなライフスタイルと自由過ぎるキャラクター、オシャレ過ぎるファッションセンスで爆発的な人気を集める。2019年12月には、自身の歩みを振り返った初のフォトエッセイ『友達ゼロで不登校だった僕が世界一ハッピーな高校生になれたわけ』(kadokawa)を出版。
Photo:Yuya Takahashi
Styling:Kaori Okano(TRON)
Hair&Make:Reika Sakamoto(hair & make up Allure)
Text:Ayumi Kinoshita
Edit:Sara Fujioka,Haruyo Sugie(Roaster)