—今はまだ高校生なので、静岡に住んでいらっしゃるんですよね。ひかりんちょさんは地元では目立つタイプでしたか。
小学校のときはパーマをかけたり髪を染めたりしていたので、見た目ではだいぶ目立っていましたね。周りにはそういう子はいなかったので。
—批判や周りの目は怖くなかったですか。
全然怖くなかったですね。逆に“みんなと違うことしている自分カッコいい!”って思っていました(笑)。人見知りだからしゃべることはできないけど、見た目で目立つことはできるので。今はありのままの自分を出しているだけで、そういう考えではなくなりました。
—自己表現をしているという意識はありますか。
私の場合、“表現する”ということを考えて行動はしていないです。そのままやりたいことをやる、言いたいことを言う。好きな音源でTik Tok撮ったり、好きな服を着て写真撮ってinstagramにポストしたりと、そのままの自分を出しているだけです。でもモットーがあって、すべて自分で責任を取れる範囲なら好きなことをしてもOK、ということにしています。親や先生、友達とか誰にも迷惑をかけない範囲でも、やれることはいっぱいあるので。
—自己表現をするにあたり、影響を受けたものはありますか。
基盤になっているのはダンスかもしれません。ずっと小さい頃から洋楽をかけて踊るのが好きで、幼稚園からダンスで自己表現していました。それが今はSNSに変わったって感じですね。
—中学校時代は不登校だったとお聞きしました。
昔から人見知りで、人付き合いがすごく苦手でした。小学校は仲いい子もできたし頑張ったんですけど、中学校は県内でも生徒数が多い学校で、全然仲いい子がいないし、グループ感も嫌で行かなくなってしまいました。見た目の印象からすごく友達多そうと言われるんですけど、本当に友達少ないんですよ。話しかけにくい、近寄りがたいと言われます。でもSNSだとこの見た目でフォローしてもらえたり、共感してもらえたりして。
—SNSに救われたんですね。
不登校だとは自分的には思ってなかったんですけど、学校に行けない状況をSNSに書いたら、私も同じ!って共感してくれる人がいて。何で学校に行けないんだろうと、原因は分かっていたけど実際の解決法が分からなくて悩んでいましたが、SNSで同じ悩みの人がいると知って、ちょっと気持ちが楽になって救われましたね。
—そこから学校に関して何か変わりましたか。
高校からは通えるようになりました。中2・中3ってあまり行ってなくて、今は行っておけばよかった、って本当に後悔しています。だって給食が素晴らしすぎるから(笑)!私、給食大好きだったんですよね。主食・おかず・デザート・飲み物までついてワンプレートで出てくるのってすごいなって中3の後半で気づいて、ちゃんと学校行っておけばよかったなって。今、私のような理由で不登校の子がいたら、給食は食べに行こうってアドバイスします(笑)。無理にとは言わないですけど、行かないと本当に損した!って思う位おいしいよとは伝えたいです。
—校則によって自己表現できない場合もあると思いますが、ひかりんちょさんはどうしていましたか。
私も中学のときは校則が厳しかったので、筆箱とか持ち物で好きなものを主張したり、学校行く前に香水シュッとふりかけて自分らしさを発信していました。校則は守りながら、許される範囲で楽しんでいましたね。
—KATEは「no more rules.」をコンセプトに掲げていますが、ひかりんちょさんが縛られたくないルールって何でしょうか。
10代というだけでひと括りにされて、10代=若いって大人世代から思われるのはすごく嫌だなって思います。10代だってしっかりしている人も働いている人もいるのに、“若いからしょうがないよね”っていう大人は嫌いです。あとはLGBTの方に対する恋愛のルールですね。海外だと結婚できるけど日本だと結婚できないとか。知り合いで悩んでいる人がいると、何でこの国はこんなにも偏見があるんだろうと思います。恋愛くらい、自由にさせろよって。
—ご自身はルールに縛られない性格だと思いますか。
KATEさんの「no more rules.」を見たとき、“私にぴったり!”って思ったんですよ。周りに流されちゃう時って結構ありますよね。特にうちらくらいの時。私はそれに対して、ルールに縛られずもっと自由に生きていいんだよ、っていうメッセージを発信したくてSNSをやっているので。自分のやりたいことをやって離れて行く人はそれまでの人だし、その人に何かを求めるなんて考えない方が、絶対楽に生きていけると思います。
—周りに合わせないというその一歩がなかなか踏み出せない人も多いのに、ひかりんちょさんができたのはどうしてだと思いますか。
小学校のときから無理して周りに合わせてなかったし…んー、何でだろ?中学生のときはみんなが同じアイドルグループにハマっていて、その輪に入れなくて必然的に一人になっていたんですけど、自分が好きじゃないもののために時間を使うなら、メイクをして自分磨きをしたいっていう考え方だからかな。絶対好きなことやった方がいい。人に合わせて生きるのも否定はしないけど、私は自分が好きな服を着たまま死ねる生き方をしたい。そういうマインドでやっているからですかね。
—人と違うことをするのが怖いと思っている方に、何かアドバイスはありますか。
私は地元で好きなことを発信したところで、地元の子に好かれるわけじゃなかったんですよ。だから近くにいる友達じゃなくてもネットにいろんな人いるわ、って思うことで楽になれたんです。以前出版したエッセイ本にも書いたんですけど、“白米を嫌いな日本人もいる”。近くの友達や全員に好かれようって思うのではなく、私を好きって言ってくれる人だけを大切にすればいいって思っています。だから現実でもSNSでもいいから、自分の味方を見つけたら怖くなくなると思います。
—メイクはいつから始めましたか。
ダンスの発表会でお母さんにメイクしてもらっていたので、幼稚園の頃ですね。自分でし始めたのは、小4か小5のとき。メイクを自分でできるようになりたくて、早い時期からやっていました。カラコンもそれくらいから付けています。
—コロナ禍でメイクに関して何か変わりましたか。
うちにいる時間に、いろんなメイクをしてます。出かける予定がなくても、黄色やピンクメイクなどいろんな色を使ったり、アイラインの新しい引き方にトライしたり。そのおかげか、メイクの幅が広がりました。大切なときはお気に入りのメイクをしますが、毎日気分で変えています。
—こだわっているところはどこですか。
眉毛と目ですね。人が最初に見るところって目もとだと思うので、眉毛は濃い目ではっきり書いて、これでひかりんちょ、って分かってもらえたらいいなと思って。でも私、眉毛書くのが本当に苦手で3年くらい“眉毛変じゃない?”ってずっと言われていて…(笑)。やっと最近“眉毛うまくなったね”って言われるようになりました。
—今後メイクに関して求めることはありますか。
社会にでたらメイクをする機会が増えるから、学校でそのことについておしえてもらえたらいいのになって思います。あとこの場はメイクしちゃダメ、この場はメイクしないとダメって、何でだろうなとも思います。もっといろいろな場所で、自由にメイクができるようになったらいいですよね。
ひかりんちょ
2003年、静岡県生まれ。小学校の頃からSNSで動画投稿をはじめ、現在は総フォロワー数150万人越えのスーパーJKとして注目される。10代に多い、学校や友達関係の悩みに対する芯のある考えが共感を集め、2019年には初の書籍『ありのままの私を受け入れずに批判する奴には、心の中で中指立てればいい』を出版。2020年には『17歳 自分のことを愛せないと誰のことも愛せない』(ともにKADOKAWA)も出版。10代代表として、今後のマルチな活躍が期待される。
Photo:Yuya Takahashi
Hair&Make:Monmo
Text:Ayumi Kinoshita
Edit:Sara Fujioka,Haruyo Sugie(Roaster)
Design:Fuyuko Manome